「推し」という言葉の意味は、意外に深くて重かった?本屋大賞 「推し燃ゆ」を読む

◆2021年6月13日(月)江別は晴れ

あしたから、いよいよ二週間ぶりの出社である。

今日は最後?の読書・・・


推し燃ゆ(おしもえゆ)

宇佐美りん

河出書房新社

発売日2020/9/10

【第164回芥川賞受賞作】

◆2021本屋大賞・芥川賞受賞作

別の本を買いに来たついでに、「本屋大賞」の帯が巻いてある本を購入。

毎年本屋大賞の本は、まあ、ハズレが無いから帯だけで買っている。(笑

今年も・・・まあ、面白くはあった。

(恐らくは)発達障害を抱える女性主人公が、アイドルグループの一人の男性を「推す」物語。

 

 

この「推す」という感覚が、非常に現代的で新しい感覚。

「好き」と「嫌い」の中間的存在、白と黒との中間のグレーという位置づけにも近いだろうか?

好きだけれども、恋愛対象・付き合いたい・・・と言うレベルまではいかない

好きだけれども、恋愛対象・付き合いたい・・・と言うのは現実的ではない

好きだけれども、恋愛対象・付き合いたい・・・と言う気持ちをやんわりと隠したい

と言う場合や、そうした気持ち・感覚を表す場合、「推す」という言葉が使われる。

 

 

あの芸能人のA君は「推し」。

私には彼氏がいるけれども、Bさんはイケメンだし「推し」

 

 

と言う使われ方をするようだ。

さらに重要な点として、この「推し」が使われる場合には、その「推す」相手との間に、コミュニケーション不全が生じている場合が多い、という事も特徴的。むしろコミュニケーションに様々な障害/問題があるばあいにも「推し」が発生しがちというところに特徴があるということだ。

「推し」が発生するときには、リアルのコミュニケーションが比較的薄く、SNSやブログ等々インターネット系のバーチャルなコミュニケーションが主なベースになるということだ。

CDを購入することでクーポン(ポイント)を集め、一定数集まると「握手会」に参加できる。異性と出会い、最初のコミュニケーションから心と心を寄せ合って、重ね合って、初めてたどり着く「手をつなぐ」という行為が「クーポン(ポイント)」を集める(カネで買う)ことで実現できるという事になる。恋という行為の代償行為とも違う、全く新しい(異性との)コミュニケーションの方法だろう。

SNS等のバーチャルなコミュニケーションの場合、それがもっと顕著になる。

面と向かっては、ズバリ言いにくい事でも、ネットを介する事で言えるようになる。

相手が芸能人という「高嶺の花」であったとしても、コメントなら「届く」事もあるし、コメントバックというコミュニケーションが成り立つ可能性もある。

また、同じ「推し」をする不特定多数(あるいは特定少数)の人々との(押しを共有するという)同じ指向性を持つ者同士のコミュニケーションも成り立つ。

少し、考えてみたり調べてみたりすると、この「推し」という二文字であらわされる心象風景やその基盤(コミュニケーション基盤)は非常に深いものがあった。

サラッと書かれた読みやすい文体とストーリーの中に、現在・現代の若者文化・コミュニケーション文化の壮大なメタファーが織り込まれている作品。

やっぱり芥川賞をとるだけある。

 

改めて本屋大賞おそるべし・・・である。

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このページは、よしかわゆういちが2021年6月14日 23:49に書いたブログ記事です。

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