◆収まるところに収まった?
ファイターズの熱烈応援団の私としては、ホークスはライバルである。それも、強力な。
なので、このシリーズは、どちらかというとベイスターズ応援寄りの観戦視点だった。なので、明日、第7戦までもつれてくれれば面白いと思ってもいた。
しかし、終わってみて、冷静に考えてみれば、これは妥当な結果であり、収まるところに収まってくれたかな・・・という感もある。
なぜなら、「シーズンの覇者が日本一になる」という、至極まっとうな結果におさまってくれたから・・・だ。
ベイスターズが日本一になるのは、勢いでアリだ! とは思っていた。
でも、そのベイスターズの上には、タイガーズが、そして、シーズンを制したカープがいるわけで。ベイスターズが日本一になった場合、タイガースとカープが非常に微妙な立場になる。
なので、私の持論は、「シーズン制覇チームはクライマックスシリーズをも勝ち上がらなくてはならない」というものである。
でないと、長いシーズンの覇者に対する敬意が薄れてしまうから・・・なのだ。
◆試合が二つあった今日のゲーム
ベイスターズ先発の今永が投げていた8回までと、それ以降は、まるで別の試合を見ているようだった。
7回終了までは、松田の技ありのHRの1安打。今永は完全にホークスを抑え込んでいた。
全く同じフォームと腕の振りで、
・回転の良い伸びるストレート
・手元でビュッと逃げるスライダー
・ストンと落ちるスライダー
・ドロンとした遅いチェンジアップ
を投げ分ける。
試合中のホークス打線のコメントで、「右バッターからはスライダーが消える」・・・というものがあったのだが、おそらくはそれが正直なところだったのだろう。
消える魔球に、伸びてくるストレート、それを打順の周りごとに組み立てを変えてくるから手に負えない。
柳田には、第一打席は変化球だけ。第二打席はストレートだけで勝負。
そうかと思えばデスパイネには、遅い変化球でタイミングを狂わせまくり。
あのミートのうまい内川でさえ、泳がされた空振り三振。
文字通り「手も足も出ない状態」で、ホークスの選手たちは敗戦の予感が背中に張り付きながらのプレーであったろう。
そして、3-3のタイになってしまえば、同じく、手も足も出なかった(8回二安打で1点も取れなかった)ベイスターズの浜口が登場する。
先に3勝しながらのみじめな逆転負け・・・の予感すら感じていた選手も少なくなかったはずだ。
その位、今日の今永は良かった。しかし、そのデキ過ぎがラミレス監督の投手交代の時期を迷わせた。
8回にわずか二本目のヒットを打たれただけで、即座に変えてしまったところにそれが出ていた。
◆そこから試合が変わった?
小刻みに継投し、逃げ込みをはかるベイスターズ。
8回裏、一死1・3塁での柳田のピッチャーゴロ。
結果論では、バックホームは余裕でアウトだった。これ(バックホーム)ができていたら、おそらくベイスターズは逃げきっていたはず。
しかし、打った瞬間キャッチャーの指示はファースト。
切羽詰まった状況での、一瞬の判断。
一点取られても、まだ、リードしている・・・という状況であれば、ギャンブルプレーの必要は無く、一塁で一つアウトを取る・・・判断は正しかった。
しかし、ここでギャンブルを選択できなかった、守備陣の視野が狭かったことが、結局致命傷になるのだから、野球はわからない。
9回裏すでにワンアウトの状態で、内川に起死回生の同点ホームランが出ることも。
サファテが11回まで登板を引っ張ることも。
誰にも予想できなかったし、この「バックホームせず、1塁でアウトを一つとった」プレーから流れが変わっていたわけだ。
それはつまり、完璧なピッチングに抑え込まれていた今永が降板したことで、試合が動いたという事でもある。
◆勝者のメンタリズムを手に入れたホークスはさらに強くなってしまうだろう・・・
サヨナラ直後のホークスの選手たちのや監督の喜びようは、それだけ、「この戦いが厳しかった」事の裏返しなのだと思う。
ホークスの選手たちは、3勝してもなお、今永の投球に、浜口の投球に、ロペス・筒香・宮崎のクリーンアップに、苦しめられ、恐れていたのだ。
3勝しているチームが、2勝しかしていないチームに、心理的にそこまで追い詰められていたとは、私にとっては意外な思いだった。
圧倒的な強さを誇っていながら、ファイターズに大まくりされた先シーズンが、彼らのどこかに深い傷として刻み込まれていたわけだ。
圧倒的に有利になっても、「いつか、どこかでまくられてしまうのでは?」という恐怖を持ちながら、彼らは戦っていたわけだ。
そういう意味では、やっかいなことになった。
ホークスのナインは、真の勝者となったと思う。「俺たちはやっぱり強い勝てるチームなんだ」という、勝者のメンタリズムを改めて自覚されてしまった。来シーズンもファイターズは、ホークスに手こずるだろう。手こずるというより、圧倒されてしまうかもしれない・・・
ラミレス監督の、選手を信頼して使う采配に乗せられたベイスターズの選手たちは強かった。
でも、やっぱり終わってみればホークスはそれ以上に強かったということだ。
ホークスの選手たち、ホークスのファンの方々、日本一おめでとうございます。
ベイスターズの選手たち、ファンの方々、最後まで熱い戦いを見せてもらいありがとうございます。
今年も日本シリーズは面白かった。やっぱ野球は面白い。