ルビンの壺が割れたと併読するととても面白いか。 錦繍 宮本輝を読む

◆錦繍(きんしゅう)宮本輝

宮本輝,錦繍

新潮社 562円

ルビンの壺が割れたを読んで、「ああ、この作者は絶対にこれを読んでインスパイアされたんだろうなぁ・・・」と思い読み返したくなった。

ルビンの壺は、SNS評が高く、Amazonなどの一般書評での評価がとても低い

こちらは、一般書評での評価が高い。SNSではTwitterで検索してみると、私と同じくルビンを読んでこれを読み返す人が多かったようだが、こちらも、おおむね評価が高い。

これをどう解釈すればいいのか・・・私にはわからない。(笑

どちらも「書簡」の往復だけ・・・という体裁の小説なのだけれども、

ルビンはそれがSNS(Facebookのメッセンジャー」であり、

錦繍はそれが手紙、であることが決定的に違うところだ。

 

ルビンの評価の傾向(SNS読者は高く、書評読者は低い)に、私は、

・左脳派

⇒分析的読書姿勢の方は評価が低い

逆に、

・右脳派

⇒直観的読書姿勢の方は評価が高い

と、書いた。

どちらにも比較的受け入れられる(ただ、右脳派の方の評価絶対数は少しすくなかったようには思われるのだが)この作品は、媒体が「手紙」という体裁だから受け入れられるのだろうか・・とも思う。

決定的な違いは「比喩」なのかな・・・とも思う。

ルビンは「比喩」が錦繍に較べて少なかったのではないかと感じられる。対して、錦繍は全編「比喩」で覆いつくされている感すらある。人生観、死生観、恋愛観、そして仕事観・・・・私は「比喩」の使い手ナンバーワンは村上春樹と断じているが、村上のそれは、どちらかというとシニカルで後ろ向きなものが多いと感じている。

対して、宮本のそれは、前向きで、どこか人生を肯定的に、一生懸命生きようとするものが多い気がしてならない。

そのあたり(前向きな比喩の多さ)が、右脳派にも左脳派にも受け入れられるところなのでは・・・とだ。

宮本輝の代表作と言えば、私は優駿だと思う。学生時代何度も何度も読んで、映画化された時はそれも何度も観た。彼の言葉の瑞々しさに紡がれる競馬の世界に魅了されたものだ。

宮本の作品に一貫している人間に対する暖かな視点。それが、この錦繍にも受け継がれている。

愛し合いながらも、離婚してしまった夫婦が10年後偶然再会し、それから14通の書簡を交わしあう、シンプルなストーリーの中に、ひとの心をひきつけてやまない、男と女の「それぞれの孤独」がある。

その「孤独」を二人の元夫婦の筆を借りる形で宮本が美しい言葉で語り上げてゆく。

別れてから、それぞれの夫婦に絶望が訪れ、孤独となるも、再開を機に、手紙のやりとりを続けながら、それぞれの明日への希望にたどり着くさまが嫌みのない手紙の書き言葉で綴られているのが、とても温かみを感じさせてくれるのだ。

 

錦繍、良い作品である。いずれまた読み返したい。

読んだ方は、是非ルビンの壺が割れた・・・・も併せて読むことをおすすめしたい。

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このページは、よしかわゆういちが2017年10月 1日 23:51に書いたブログ記事です。

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