楽園は、全ての人の心に存在し、そして・・・ 宮部みゆき 楽園(文春文庫)を読む

◆宮部みゆき 楽園(上・下)

文春文庫(2010年2月10日) 上667円+税 下648円+税

(以下、本書の内容を記述しています、いわゆるネタバレであることを、お断りしておきます)

◆夏休み、過去に読んだ作品を一機読み・・・・

薦められて、宮部みゆきの「名も無き毒」を読んだ。宮部作品の面白さを改めて感じてしまったので、思わず書棚にあったこの作品を再読した・・・


◆タイトルの理由は最後の最後で明らかになるのだが・・・

自分の娘を手に掛けなくてはいけなかった「親」の心情・・・は、その場にならないと、多分わかりきれないだろう。私も、人の親として、想像してみるのだけれども、どうにも、私の想像の枠を越えてしまう。

そして、この「親」は、つかの間の「幸福」というなの「楽園」を手に入れる。

それは、本当に文字通りの「つかの間」ではあったのだけれども、その瞬間は間違いなく、「幸福」であり、「楽園」だったのだ。

この世を生きるひとびとは、あるとき必ず己の楽園を見いだすのだ。たとえ、ほんの一時であろうとも・・・

ここでいう楽園とは、幸福と読み替えることが出来る。そして宮部は、

誰かを切り捨てなければ、排除しなければ、得る事の出来ない幸福がある・・・

とも、言い切っている。

ここでは、二人の姉妹・・・一人は、グレてどうしようもない姉、もう一人は逆に品行方正な妹。

グレて人の道にはずれてしまった、他人をあやめてしまった(だろう)姉を、ある意味、妹を守る為に実の親があやめてしまう。

何とも、言葉にならない。

思わず本を閉じ、考え込んでしまった。

娘が絶命した、その刹那、この二人の親達は、一瞬でも「幸福」を手にしたのだろうか・・・と、である。

ここでは、その「刹那の幸福」には、とてつもない「代償」があることが表現されている。自宅の床下に娘を埋めて、16年間、この夫婦は時を過ごした訳だ。その日々は、「刹那幸福」の代償としては、余りにも重く、長いものだっただろうと思えて仕方ない。

いずれにしても、途方もない代償の替わりに刹那で得られる幸福がそこにあった・・・と、受け入れざるを得ない。

何とも、複雑な思いで、読了。

◆しかし、読み物としては、非常に面白かった。そして・・・

プロットの大どんでん返しに、だれしもが「あっ!」と言わされてしまうだろう。

そして、過去の作品との交錯がある。

10年以上も前に上程された「模倣犯」との、主人公の重なりと交錯があるのだ。

この「模倣犯」は、今でも宮部の代表作でもあり、私の書棚にある。新書版で1500ページを越える大作である。

この「楽園」は、その「模倣犯」の後日談的な位置づけでもあり・・・・つまり、「模倣犯」と合わせて読むと面白さ倍増!

ということなのだ・・・

よって、これから、私は、また、宮部の魔術1500ページを再読するわけだ・・・・

えらいことになってしまった・・・・(笑

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このページは、よしかわゆういちが2012年8月14日 01:50に書いたブログ記事です。

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