青春の光と苦悩の陰、自分の学生時代を追体験させてもらえる一冊 宮本輝「春の夢」を読む(「悪友文庫3)

■2011年6月7日(火)札幌は晴れ 暑かった・・・

宮本 輝 春の夢 を読む

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Amazonの紹介。

出版社/著者からの内容紹介
なき父の借財をかかえた大学生の支えは、可憐な恋人と一匹の小動物だった。勁く真摯に生きる若者を鮮烈に描いた、青春文学の傑作内容

「BOOK」データベースより
生きた!愛した!闘った!めくるめく、あの青春の日々よ。―なき父の借財をかかえた一大学生の、憂鬱と人生の真摯な闘い。それをささえる可憐な恋人、そして1匹の小動物。ひたむきに生きようとする者たちの、苦悩とはげしい情熱を、1年の移ろいのなかにえがく青春文学の輝かしい収穫。

悪友文庫3・・・である。

宮本輝と言えば、私的には「優駿」である。オラシオンである。家人とまだ結婚する前に初めて一緒に見に行った映画である。(笑

人間を見る目の優しい、作品にもどこか暖かみを常に感じさせてくれる作家・・・という印象があった。

この春の夢では、貧乏学生の青春を「柱に偶然、活きたまま釘で打ち付けられてしまった蜥蜴」をモチーフにその希望と苦悩を情感タップリに描く。柱に打ち付けられ、「自由を奪われつつも懸命に生きよう」とする姿が明喩される。

多分、この本を読んだ全ての読者は、自分の学生時代に還り、作者と、主人公と同じ思いをすることになるのだろう。読後感は非常に爽やかなのだが、内容は青春の光と影・・・特に人間の陰の部分を青天白日の下に引きずり出したような陰鬱さがある。

タイトルの「春の光」とは、その名の通り「青春の光」と言うことなのだろう。

この本の原題は「棲息」だったらしい。棲息・・・・梅雨時の薄暗くじめじめしたなかでの暗い日々・・・をイメージさせる「春の光」とは対極にあるイメージだ。しかし、私には、何故か、この「棲息」というタイトルの方がしっくり来る。

一目惚れで初恋し、連れ添った彼女が、別の男にも惹かれてしまう。その男には主人公にはない、端正な外見、青年実業家としての颯爽、知的な優しさを備え、彼女を惹きつけて放さない。

主人公はホテルのコーヒーラウンジでその男と対峙し、彼女を半ば強引に自分の元へ引き寄せるのだが、その場面が凄まじい。

そのホテルで、その男と対面する寸前まで彼女とベッドをともにし、その直後に引き合わせる。そして、その行為の直後であることまで男につきつける・・・・・

このシーンに慄然としてしまった。

数年後に、読み返すとまた違った感慨が得られそうな、そんな良著である。これは面白かった!!!

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このページは、よしかわゆういちが2011年6月 7日 00:44に書いたブログ記事です。

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